水曜日の夜に早稲田松竹でレイトショーをみた。『呪いの館』はマリオ・バーヴァ監督の1966年のホラー映画。

冒頭はこう。悲鳴をあげてひとりなにかから逃げる若い女。陰鬱そうな屋敷から飛び出しても追跡をとめないそのなにかに追い詰められた彼女は、杭にむかって飛び降りて串刺しになる。そこでオープニングクレジット。

イタリアの田舎町にやってきたよそ者のポールとモニカが主人公だ。ポールは冒頭で墜落死した村娘イレーナの死因捜査にあたって検死の仕事をしにやってきた。モニカはその助手役の医学生。役場にたむろする村民たちは無言の敵意をよそ者に向けて、閉鎖的な田舎町の嫌な感じをむんむんとみせている。

実際、いやな感じの映画だった。ホラーの空気はあるけれども、生者の邪な心がいくつものトラブルをつくってどんどんひとを殺しているという雰囲気だった。無知はひとを殺すという命題はあってもいいとおもうけれども、その無知を断罪しているのも一方的なひとの精神であるから、救いはなかった。

ポールとモニカは長い恐怖の夜を逃げ延びて、朝日に向かって歩みはじめて完結となる。でもその過程で名前のついた登場人物たちはみんな死んでしまった。呪いで死んだひとはひとりもいなかった。みんな思い込みで自殺するか殺されるかしてしまったから。陰惨な話であるのに反して、ポールとモニカは「ともかくおれらは助かったぞ」というふうになっていて、ぼくはふうんと呆れたような気分でみ終えた。