このまえ川村美術館まで走らせたときに 10000km を打った。はじめての車検から九ヶ月、そのとき距離計は 7000km ちょいだった。

桁が繰り上がってキリがいいということのほかに、エンジンオイルを交換する目安はだいたい 3000km 走ったらやってみようというよくいわれる判断基準を満たした。交換してみよう! はじめてのエンジンオイル交換だ。

というわけでまずひとりでやるやりかたを調べてみた。インターネットでみつけた、厳密にはおなじ車種ではないけどヨーロッパ向けに生産されていたほとんどおなじ車種の英文のサービスマニュアルをみて、すごいページ数の PDF のなかからエンジンオイルのセクションをつまみ読みした。バイクの整備一般を紹介している和文のウェブサイトもみてお勉強した。

トルクレンチ、持ってる。廃油処理ボックス、持っていない。オイルジョッキ、耐油手袋、持っていない。オイルフィルター、どこでどうやって手に入れればいいんだろう。フィルターとエレメント。ギャスケットとドレンワッシャーとパッキン。おなじのを違う呼びかたで呼んでいるだけにみえるけど、使い慣れた言葉じゃないからなかなか頭にはいってこない。

座学していてもなかなか身につかなそう。とはいえ、オイル交換は「分解してももとに戻したらもと通り」ではなくて「使い捨てのオイルを入れ替え」「使い捨てのパッキンを取り替え」と、かならず不可逆な工程があるから、冒険的にチャレンジするのはちょっとこわい。まあやればなんとかなるんだろうけど、数日がかりの作業になったときに、屋根付きガレージがないのはわりとギャンブルになりそうだ。

なんていう「自分でやってみたいけど自分でやれるか自信がない」という葛藤をひとしきりして、お店にもっていってみてもらうことにした。車検をとおしてもらったお店ではなくて、このまえタイヤのパンクを直してもらったひとり親方の工房にもっていった。

ぼくの乗っている ER-4n は、もともとヨーロッパ向けの大型バイクだったのを、ボディはそのままに日本のルールにあわせた小さめのエンジンに詰め替えて逆輸入したみたいなモデル。十五年前くらいに発売されて、あんまり売れなかった。お店のひとも「これはなかなかめずらしいから…オイルフィルター交換は注文しないとできない!」といって、それはまた次回ということになった。

車検のときにフィルター交換していななかったっぽいのを、車検の明細をいっしょにみてもらって確認した。本当ならフィルターも交換したいところだけど、はやめのオイル交換だとおもえばフィルターはまだもつから大丈夫、ただし次の車検でフィルター交換ちゃんとやりましょう、という話になった。

3000km 走ってオイル交換に来るのはかなり律儀でまめだけど、東京で乗るんだったらアイドリング時間が日本一長いぶんだけエンジンは距離計にあらわれる以上に稼働しているから、ちゃんともってきてくれてよかった。そうほめられた。自分でやりたいっていうのもわかるけど、揃えられる機材が違うからまあお店でやるのがコストは安くつくよね。あんまりこだわりすぎず楽しめる範囲でがんばってね。という助言もされた。

そうかあ。いちどは自分でやってみたいとおもうけど、次回にフィルタ交換もあるのはまたお店に頼んだほうが無難そう。次の次のときに自分でやってみてもいいけど、それは二年後くらいになりそうだし、それまではできるだけたくさん乗ってたのしんでみるほうに体重をかけてみよう。

メンテナンスは、もっとあちこち乗り歩きながらゆっくり勘を育ててみるのがよさそう。これならできそうという感覚がのんびり育つのを気長に待ってみよう。

帰り道でこころなしかエンジンがさっきまでよりいい音をだしてる気がした。