年末に体験移住をさせてもらった東松島市のひとびとから、こんどは都内で移住イベントをやるのあそびにきてください! と呼びかけてもらっていった。土曜日にそこへ出かけた。

有楽町の「ふるさと回帰支援センター」で説明会方式のイベントがまずあった。そのあと赤坂の「トレジオンポート」というレストランでパーティがあった。

東松島、いいじゃん。というムードに年末からこっち固まっているから、なんとなくイベントのターゲットには重なっていないところもあった。移住にまつわる不安はなかった。未知のものへの不安もそれに対する回答ももとより紋切り型にならざるをえないものとみえた。石橋を叩いたらあとはわたるしかないという訓話をかぎとるおもいもした。もっとも、配偶者や子があれば違う世界がみえもするのだろう。

つとめて酒はのまずに過ごして、しばらく静かに座ってうずうずした喉がもとめられた感想をカラオケの気分で大きい声で放って、口からでまかせでほろ酔いの面々とはなすのはたのしかった。

酒がまわって興奮した若い参加者の面倒をみたなりゆきにて会場にさいごまで余ることになって、運営のかたがたの撤収を見送ろうとして、帰り道にちょうどテラス席で二次会をやっているところに鉢合わせた。イベントの反省会をしていた。ワインと日本酒をすこしご相伴させていただいて、ホストとゲストの垣根が下がって、すこし気楽なおもいがした。

地場企業の経営者さんがみえていた。リサイクル会社をやっている。四半世紀かけて拡張してきて、なかばにて直撃した震災のあとも立て直して、さぞやりてなんだとおもうけれども、照れくさがって会社の紹介はほとんどスキップして軽口を話す声のほうが大きかったことが印象的だった。はじめてみた気がしない風貌は、ツイン・ピークスのときのデビッド・リンチに似ていたのでは、とあとでおもいだすことになった。

すこしおそくなるも、小雨のなか走って帰って、深夜前にシャワーをすませてふとんにもぐった。妙な夢をいくつかみたような気がする。尿意で目も覚めた。深く眠れないのがもどかしかった。すこし飲んだくらいでこんなに調子が狂って、だんだん身体が酒を拒みはじめている気もした。

一年前のいまごろに海士町の「島ッカソン」に呼ばれたのをおもいだしていた。海沿い、というかあれは離島だった。離島のなごやかさ。親密さ。雰囲気のよさ。東京にすべてがあるわけではないこと。ないものはないところにあるものがあること。

それの手触りをおもいだしたい。ただし島根というよりは宮城あたりでもとめてみたい。それで東松島に惹かれたよう。こういうナラティブをアドリブのなかに発見して、ひとの前ではなして、なにげない説得力を発明したようにおもった。そんな直線的な動機がいつも一本筋をとおしていたわけではないことも知っているが、因果がひとつ掘り起こされて、それが嘘を交えてはいないとおもった。