金曜の夜にサントリーホールでN響の定期演奏会を聴いた。

この日のプログラムはベルク「バイオリン協奏曲」と、マーラーの交響曲第4番。前の週にマーラーの交響曲第3番を聴かせたのに続けて、これを携えてアムステルダムに演奏旅行に出かけるためのレパートリーのようだ。

この前の演奏会のすこし苦い印象をかき消して、はきはきしてたのしい音楽だったとおもう。特にマーラーの交響曲をぼくはたのしんだ。散らかって聞こえてもおかしくない雑念の群れ。よこしまさも含んで仕上がりとした作曲家の風変わりな執心。正典のなかにちょっとした異常が混ざっているのを隠さないところに説得力があるとおもった。

自然なまとまりがあるように聞こえていい感じがした。百個の楽器が耳のなかでひとつになって鳴るのがわかっていい気分だった。言葉を介入させて分析しようとさせなくて、ただぼうっと座らせて通り過ぎさせることがさっぱりしていた。

グズグズした天気がいちにち続いて鬱陶しかったあと、ホールに出かける時間を狙いすましたみたいに豪雨が降った。登山靴を履いて出かけた。パンツは膝よりしたをずぶ濡れにした。地下鉄は蒸して混んでひどかった。

これが夏のピークだったらいいのに。なんて、これから夏がくるのを考えて先回りして嫌な気分を作っている。きょうをよく生きないで未来を生きようとして不幸を呼び寄せる。これはよくない。

涼しく過ごせる日が続いてすばらしいことだ。