金曜の夜に渋谷にN響の定期演奏会を聴きにいった。頭のなかにむやみなかんがえが漂っていてうまくききとることのむずかしい夜だった。
ギエドレ・シュレキーテさんは国際的なキャリアをこれから開拓しようという活発な指揮者で、N響を振るのはこの定期公演がはじめてだという。ぼくにとってもはじめて知るひとだった。
演目はこう。シューベルト「ロザムンデ」序曲、ドホナーニ「童謡(きらきら星)の主題による変奏曲」、そしてリヒャルト・シュトラウスから二曲で、歌劇「影のない女」による交響的幻想曲、歌劇「ばらの騎士」組曲。
ドホナーニの演奏はピアニストの藤田真央がソロを担った。カーテンコールあびて舞台袖とピアノを行き来するのが競歩のようにすばやいのが印象的だった。子どもがピアノ発表会で恥ずかしがってせかせか動くみたいだった。異才のひとなんだとおもった。頭が濁ってうまく聴けなかったのが惜しかった。
アンコールには、セヴラックというフランスの、ドビュッシーと同時代の作曲家の小品をひいてくださった。ピアノ曲は “Stances à Madame de Pompadour” というよう。その場では強く印象に残ったとおもわずに帰って、あとで録音を聴きなおしていい曲と知った。
シュレキーテさんは自身に満ちて、ダイナミックな所作が立派なものにみえた。枯淡の表現があるとして、その対義語をさがせば彼女のスタイルをもっともよくあらわすとおもう。生命力に満ちていた。
バイオリンとオーボエのデュオがよかった、と手元のメモに書いてある。それがどの曲のどの部分だったかはおもいだせなくなってしまった。