不安感があったのかもしれない。いまとなってはわからない。たしかなことは一睡もできないまま空が白みだしてしまったということだ。
テレビゲームに夢中になって朝まであそんでしまうことがあっても、眠気を我慢して遊びきったあとにはばたりと眠りにつくわけで、ただ布団のなかまんじりともしないで朝を待つだけというのは苦しい。
すこしも眠っていないのに目玉が乾くかんじがやってこない。頭も冴えきってしまっている。なにもやることがなくて、おろおろとバイクを出していつもみたいに臨海のほうまで走らせた。
まだ五時とかなのに、はたらく車ははたらいている。臨海道路は大型トラックでにぎわっている。混んでいるとはいってもスムーズに流れる道をとおって若狭海浜公園にはいってバイクを停めた。
自動販売機でアイスの缶コーヒーを買って海岸のほうまでいったらベンチがあった。座ってぼうっと水をながめた。ぼうっとイヤホンで音楽をきいた。
向こうのベンチで気絶したように寝ている人間のシルエットがみえて、連れてこられた飼い犬が「なんでおまえここで寝るんじゃ」という本心を隠したみたいにすました真顔でそれに対峙していた。それはすばらしい画だった。
帰りは環七。7時台になって渋滞がみえはじめて、退屈で眠くなった。気合をいれて帰ったけれど、帰れば急に眠くなるということはやっぱりなかった。
まるでゆうべはよく眠れましたよという具合にいつもとおなじ時間にはたらきはじめた。頭がはたらかないということもなかったけど、それでよかったうれしいなとはおもわなかった。