夏休みのお楽しみをひとあしはやめにと一週間の北海道旅行に出かけています。二日目も札幌です。

前の日は朝から晩まで動き続けてぐったりというわけで、二日目はおもいきり寝坊とします。ふたりして十時間以上も寝続けて、お出かけの支度ものんびり済ませて、正午前にようやく外へと繰り出します。そうはいってもあわてて観光地を目指すでもなく、まずは軽い腹ごしらえです。

「サンドリア」は札幌にだけある人気のサンドイッチ屋さんで、ホテルから歩いてすぐのところに本店があります。ちいさなお店でいて、どうやら24時間やすまず営業しているようす。まだ起きたばかりの眼に日差しはまだまぶしく、外国のタバコ屋さんみたいな角のちいさなお店にすこし列をなしているのにならんで五分、自動ドアをくぐると涼しい店内にはお肉屋さんみたいなショーケースがあって、そのなかに無数のサンドイッチが並んでいます。五つ選んで持ち帰ります。持ち帰りだけのお店なのです。

日傘を忘れてホテルまでとりにもどるのに付き添ってから、セイコーマートでアイスカフェラテをいっぱいもらって、ホテルから中島公園に出直します。ベンチを探してすこしうろついて、日本庭園のなかの池のわきに座を占めます。サンドイッチを広げようとするとたちまち池からカモが次から次へと飛び出してきて、おこぼれをくれるならもらってやらんでもないぜ、みたいに泰然としていっせいに毛づくろいをはじめました。でも、なにもあげません。

たまごサラダのサンドイッチ、トマトとバジルのサンドイッチ、梅鶏のサンドイッチ、コーンコロッケのサンドイッチ、夕張メロンのサンドイッチ、と順番にいただきます。梅鶏は変わり種のようできゅうりのシャキシャキが絶妙でうまかったし、夕張メロンのデザートサンドもほおばるなり口の中に豊かなメロンジュースが広がって天国のようでした。ぜんぶおいしかったです。三つ目か四つ目を食べはじめるころには、カモたちは「いけずどもめ」と背中に語らせながら別の猟場へ泳ぎ去っていきました。カラスが池の向こうで行水をしているのがみえます。中島公園はさんさんと晴れても暑すぎないお日柄に散歩がてらのピクニックをふらりとできるのがすばらしい公園です。

地下鉄に乗って大通公園まで出かけます。まずベンチを探してそれから作戦を決めよう、といって木陰のベンチに腰掛けます。平日のお昼下がりになにをみるともなくぼんやり景色をながめて、札幌は都会だねと紋切り型のためいきをつきます。腰を据えたまま三十分ばかりまた立ち止まって、三時過ぎになってようやく観光をはじめます。時計台をながめて、そのまわりをぐるりと巡って草花をみます。テレビ塔の展望台にのぼって、あちらにはどこまでも遠い平野を、こちらには街の向こうに山並みをみます。

丸井今井にはいって、六花亭でおみやげをみてもらいます。地下街のダイコクドラッグで日焼け止めの詰め替えもみてもらいます。すこし休みましょうといって宮越屋珈琲にはいります。二時間ばかりのアクティビティが連日の疲れの呼び水になったみたいにおたがいぐったりしています。耳管炎の症状が出はじめてしまったけど、応急にできる点鼻薬をホテルにおいてきてしまったと彼女はいって、いちどホテルにもどろうか? と尋ねれば「それはしなくていい」というだけで、無言で無表情となってしまったのを黙って見守るだけの時間となってしまいます。喫茶店はモダンジャズのピアノ曲集をかけていて、そのプレイリストがアート・テイタムを入念に選曲しているのに好感です。

きのうに続いてKさんと落ち合って夜ごはんとします。はじめいこうとした居酒屋の「ふる里」は満席にて、大通公園からすすきのまでお店をさがしてひと歩きします。狸小路にある「魚人(うおっと)」というお店にはいってみることにです。焼きトウキビ、お刺身、ラーメンサラダなどたべて、サッポロクラシック、ハスカップサワー、ナポリンサワーなど飲みます。続いてそのすぐ隣の「サッポロ餃子製造所」のカウンター席で、ザンギと餃子の味違いをおかわりしてはもりもりたべます。

シメパフェのお店があちこちにあるのをみて「ほんとうに食うんだね」と感動しながら、生クリームはちょっと苦手というので別のものをお願いして、次の三軒目で最後にしようといっていきます。ニッカウイスキーのあの看板のあるおおきな交差点を渡ろうとして、ふたりが赤信号をエイヤとわたるのについていけなくて中洲にいちど取り残されます。お酒を出してくれるお店の名前は “Rook” といって、おのおの生フルーツのカクテルをいただいていきます。Kさんは23時すぎまで案内してくれて、平日なのにありがとうとたくさんお礼をして、彼はすすきの駅のほうへ、ぼくたちは中島公園のほうへと別れます。

夕方まで耳管炎でつらそうにしていたのをおぼえていたから、夕食のあいだ我慢して無理を通してひどくなっていないかしらと長く引っかかっていたのも、ほろ酔いの元気さでたのしく歩いてふたり帰っていくことができたらひと安心です。地図アプリをみながらホテルへと裏側の路地のほうから近づいていったら、ここはすすきのにほどよく近く、ほどよく離れたちょうどいい密会場所ということのようすで、地図にも載っていないたくさんのラブホテルが軒を連ねているのを発見したのでした。