今年の盆の角館は、透き通るくらいの青空に入道雲がもくもくと立つ。甲子園の中継がある。戦争の特集放送がある。小学生であれば学校のプールにさっそく出かけるのが待ちきれないはずのすばらしい朝だ。

母はレンタカーをとりにいき、妹は美容院にいく。母子で成人のつどいに出かけるのだという。ぼくは寺まで墓参りにいく。迎え火を焚いたまま炭が落ちてるから拾うようにといわれて、新聞紙をひとつ籠にいれて歩く。誰もいない朝のお墓にひとり線香をあげる。

みなれたようでよく読んだことのなかった墓碑には、曾祖父母より先にふたつの女性の名前がある。二歳で亡くなったチエさんの没年を西暦で数え直すと、彼女はきっと祖父の姉と知る。それより先に逝ったエツさんはきっと彼らの祖母だ。それより古い血のことを祖父はどう記憶しただろう。彼は黙して遺さなかった。

甲子園で黙祷の長いサイレンが鳴るのをみたあと、家に鍵をかけて式場に出かけていくのにあわせて出る。わらび座への長い道を走らせて、中学生のときに遠いともだちの家までこの道を自転車でこいだのをおもいだす。

抱返渓谷に寄り道をする。山と空と雲がものすごい景色をしている。もういないおばあちゃんたちのことをかんがえながらおろおろ歩きだしてみると、たちまち肌着が汗でぐっしょりとなる。エメラルド色の川を見下ろす橋のうえには気持ちのいい風がふく。

田沢湖をついでにといって観光するにはお昼をずいぶん過ぎてしまって、かまわず仙岩峠をのぼりだす。仙岩峠の茶屋でお昼にする。豚汁定食はもう売り切れ、おでん定食はまだあるようだけど、ここはチャーシューメン(千円)にする。峠の涼しさとはいってもスープまで飲み干したら汗がドバドバ出る。

盛岡のカフェ「響」でグアテマラをひとついただく。カルロス・クライバーとバイエルン国立管弦楽団の『椿姫』をはじめから聴く。レコードの片面が終わればしずかな時間をしばらく過ごす。

県立中央病院のそばでパートナーと待ち合わせる。東北道に乗って帰る。若柳金成で降りて、石越をとおりすぎるころに暗くなる。三陸道は登米から大渋滞だねと地図におそわりながら、桃生豊里から自動車道で帰る。

近所でちゃんこを食べる。天ぷらざるうどんでお腹いっぱいになる。甲子園のナイターで仙台育英がベスト8に進むのをみとどける。