月末に引越しを控えたともだちの手伝いで一日がかりのしごとをする。
十時に引越し先の家に集合して、庭の草取りからする。なす、きゅうり、ミニトマトなどがみごとな実をつけている。ほおずきをひとつもいでかじらせてもらう。甘くすっぱく爽やかにおもわせてどこかこってりもしているのがうまい。
二階にあがって窓をあけて、公園とその向こうに線路がみえるのをながめさせてもらう。そのさらに向こうの空にはみごとな入道雲がみえる。それをのぞかせる階段と窓のかんじが中野で借りていた部屋によく似ているのを懐かしくおもう。まだ朝ながら強く照る日が部屋中を暑くしたあと、窓をとおりぬける風がじつに爽やかで気持ちがいい。
きょうのプロジェクトはこれです、といって、お風呂場にくっついた脱衣所の、壁紙をおもいきりはがしたあとの朽ちたような壁いちめんに漆喰を塗る。手でするほうが刷毛よりもうまくできるからそうしましょうと、すでに別の部屋でそれを経験済みの彼がいう。
ゴム手袋を手にはめて、漆喰の泥がたっぷりつまったバケツから片手ですくって、もう片手でそれをすこしずつとっては手で塗っていく。
水を含んだ漆喰の泥が壁にぶらさがると、剥がしきれなかった壁紙が漆喰の湿り気と重さでふやけて波打ちはじめる。その波打っているところが彼には気になって、ヘラですこしだけ削りとってやろうとすると、ベロベロベロといって壁紙がひろく剥けてしまう。
それを何度も繰り返す。つまり、壁紙を剥がすための漆喰をまず塗る。浮いた壁紙を漆喰ごと剥ぎ取る。邪魔者の消えた壁にもういちど漆喰を塗る。まさかこんなことになるなんて…と彼はいっていたけれど、二度やってきれいになるなら覚悟きめてきれいに仕上げましょう! 玉ねぎみたいにどこまでも剥けてしまったらしんどいけど、たかだか二度で済むなら見返りはでかいですよ…といってがんばる。
午前中の二時間を見込んでいたけれど、二度塗りのための手戻りのコストのためにとても終わらず、お昼にいちど区切りをつけて幸楽苑で塩ラーメンを食べる。ぼくのほうでは餃子とチャーシュー丼のセットもつけてやる。汗を流してはたらいたとはいえ、これだけあれば満腹だろうとおもって食べはじめたら、あんがいペロリと平らげてしまう。
別の用事に顔をだしてくるので、三時から再開しましょうといって、ぼくはいちど家に帰ってやすむ。三時半からまたやりはじめて、あちこちを二度塗りして、夕焼け空も消えかけるときにようやくひと段落する。最後に養生テープをはがしたら、半分しかまだ固まっていない漆喰がベロリと剥けて、ギャアといいながらそこをまた塗り込めて傷跡を隠す。
こうして脱衣所の壁はいちめん真っ白となって、着手するまえの写真と比べたら明るさも清潔感も一目瞭然によくなった。
宮戸島のもう営業のおわった海水浴場で、夏の終りにおとなのためのお祭りをしている。もうすぐ終わる時間だけど、顔だけ出しにいきましょうかといって、運転をおまかせしてふたりで繰り出した。ハンドルをあずけているので、すみませんひとつだけ、といってビールをひとつだけいただく。フランクフルトもいただく。知り合いのおじさまがおられて、この日が誕生日で還暦祝いだといって、赤いちゃんちゃんこを着てよく目立っている。
帰り道の途中にある台湾料理屋に寄って、回鍋肉定食と刀削麺セットをそれぞれ食べて帰る。